君はまた間違えた
フエルソード顛末記
何があったんです?
ハンゲームの横スクロールアクションネットゲーム「エルソード」。
大晦日から年明けにかけて何か騒ぎになっているというのを知っている人もいるかもしれない。
ちょうどその時期に他のゲームも一段落し、久々に様子を見ようかと思っていたところに致命的バグの話。しばらくの間経過を見ていたので簡単にまとめてみた。
大筋としては、アイテムの増殖(Dupe)方法が動画で公開され相当数のアイテムが増殖、対象としては課金アイテムおよび現時点での最強装備作成素材までが含まれ、更に店売りによりED(ゲーム内の通貨)を大幅に稼ぐ事も可能。
時系列
- 2011/11
アカウント内キャラクターの共有銀行(倉庫)実装
この時点で一度増殖バグが発覚、一旦はメンテナンスで修正…が、実は穴を潰しきれていなかった。 - 2011/12
実は増殖方法公開に至るまでも複数人が何度も報告
報告の存在自体は後に運営が声明として認めるも、報告が不完全で運営・開発ともに再現せずと主張 - 2011/12/31
増殖されたアイテムが大量に露店に並ぶ、アイテム強化の成功ログが流れるなど、不穏な気配が漂い始める - 2012/01/01 18:29
YouTubeに増殖を実際に行い、手順を見せる動画がアップされる(現在非公開) - 2012/01/01
増殖は更に継続、公式掲示板の増殖関連記事は削除されているのだが、他に何の動きもない。 - 2012/01/02 02:40
修正パッチ公開(記事下側)、だが、この時点で何故かサーバ閉鎖を行わない
このため、パッチから数時間はログアウトしない限り穴を突いて増殖を行えた - 2012/01/02 09:00
臨時メンテナンスでサーバ閉鎖、09:30にサーバ開放
このタイミングでようやく増殖が不可能になる - 2012/01/03 14:09
次回メンテナンスのお知らせ
01/04に予定していた定期メンテナンス中止(01/11までなし)のお知らせ - 2012/01/03 15:00
共有銀行関連にバグがあったと告知(記事上側) - 2012/01/05 17:41
公式ブログ更新(新年のご挨拶) - 2012/01/06
増殖を行ったユーザーが郵便で無差別に増殖品を送り付けるなどの工作を始め、あるいは増殖品と知って提供を求めたり露店で格安で買うユーザーも増える。
元からそういった事例はあったが、01/02のメンテナンス前後からの不信と不満が爆発した模様。運営が全体に対しての高額品取引規制などを行わないため、完全に収拾がつかなくなる。 - 2012/01/06 16:53
銀行システムの不具合対応告知
調査のために停止しているアカウントがあるとのこと。 - 2012/01/06 20:00
公式ブログ更新(新年のご挨拶2)
「1日に修正がすばやく行えた」 - 2012/01/10 20:38
公式ブログ更新(不具合について)
ブログ更新の停止を告知、コメントも閉鎖。 - 2012/01/11 16:20
銀行システムの不具合対応告知
アカウント停止などを含む措置を発表
(Twitter等は省略)
2012/01/01 初動
こんな致命的なバグが発生したことそのものが問題なのだけど、それは言っても仕方ない。起きる時は起きる、その現実を踏まえて起きる確率を限界まで低くして、かつ起きた場合の対応を考えないといけない。
公式掲示板から増殖関連の記事を削除している時点で、問題を認識していた事は間違いない。特に今回は手順動画が存在する以上、それをエビデンス(※1)として報告、即座にサーバ閉鎖を上申するべきだし、責任者はそれを承認するべき非常事態だ。
責任者が不在であった場合、体制そのものがサービス業として許されない。サービス期間中は年末年始であろうと当番制などで常に決定を下せるようにする義務がある。サポート窓口の時間帯についての言及はあれど、ゲーム自体はサービス中だ。
(※1)
証拠、痕跡。ここでの意味では正常あるいは異常動作の証明ログ、スクリーンショットなど。
2012/01/02 修正
動画公開から8時間、パッチで修正…にもかかわらず、ここでも不可解な事に即座にサーバ閉鎖を行わない。
パッチ公開前に完全に問題は認識され、少なくとも開発に要請ができる責任者が動いている。それにも関わらず放置。パッチが到着、クライアントに適用するよう告知してもまだサーバは落とされない。(クライアントへのパッチ適用はサーバを起動したままでできた)
この初動からの間違いが「正月休み優先」という印象を呼んで、運営の信頼が損なわれる事になる。
2012/01/06 調査一次対応
おそらくは最も、そして致命的に間違えたのはこの時点だろう。
問題が起きたときに必要なことは大きく分けて3つ。
・原因の特定と被害拡大の防止
・被害対応調査と復旧、場合によっては補償
・再発防止
ユーザーへの告知等もこの中に含まれ、全段階で間違いなく行われないといけない。
今回は原因の特定と修正は01/02のパッチで完了して…「いない」。
どういうことかと言うと、アイテム増殖は確かにそれ以上は起きない状態にした。が、露店の設定限度額で取引されるレアリティのアイテムが増殖された後もそれらが拡散することについて何ら対応を取っておらず、ゲーム内容は破壊されるままに任された。
言うならば、工場の火事で火元は消したが化学物質の垂れ流しと被害拡大は放置、出火の責任だけ後で問えばよしという意識の低さ。
ここ(あるいは元の定期メンテナンススケジュールの01/05)が最後のチャンス。
この時点で12/31以前までのロールバックをかければなんとか間に合ったかもしれない。もしくはここでアイテム取引停止に踏み切れば少なくとも被害拡大は防げた。
2012/01/11 調査二次(以降)対応
正直なところ、もうこの段階で語るべき事はほとんどない。
正常化できる段階を超えてしまった以上、あとは愛想を尽かさずに残る人がどれだけいるか、壊された(現在進行形)ゲーム内容がどの程度将来に響くか、被害評価の段階になっている。
確かに不正者の処罰は大切なのだが、破壊された経済はどうするのか?それについての視点の告知は皆無なのが信じられなかった。