- タイトル:ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国
- 著者:ブランドン サンダースン (著), Brandon Sanderson (原著), 金子 司 (翻訳)
- 出版社:早川書房
- 形態・レーベル:ハヤカワ文庫FT
- 価格:¥861+税
- 発売日:2009/5/5
読了。
傑作である。色が合うならば迷わず買って何らの問題もない。
陰鬱な降灰が続く灰色の都市。夜になれば霧が全てを覆い隠し、揺るがぬ不死の千年王の抑圧が続く。
そんなある日、下層民の盗賊である主人公の少女は、反逆を企てる謎の男に見い出され…。
王道の始まり方をし、金属を体内で燃焼することで燃やした金属に対応した力を得る異能力など、つかみは十分。そういった物を期待してとりあえず第一部だけ読んでも良いだろう。
だがその真価は、徹底して終わりから作り上げられた極めて緻密な設定の開示と、各キャラクターが自身の生き方を決定して世界を変えていく第二部以降。
途中で退場する者が、最後まで完走した者が、死してなお物語を走らせた者がいる。群像劇と言うには使い捨てられた名前は少なめだが、間違いなく個々のキャラクターによって編み上げられた話だ。
また、「設定厨」としての重心が世界設定側にあるならば文句なくおすすめできる。
以後、直接的なネタバレは避けるが(あまりにももったいないのだ)、察しの良い人はいくばくかの真相に辿り着いてしまうだろう。