Ex-Libris
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コード・オブ・ジョーカー ファーストインプレッション

概要

セガ一押しの「思考型デジタルトレーディングカードゲーム」。分かりやすく言えば「実体としてのカードが存在しない、試合料金のかかるTCG」である。
都内各所のセガ系列店舗では大々的に宣伝、フライヤーで飾り立てて結構な台数を初期から投入。
さて、その出来は。

なお、キャラクターは最弱と名高い京極院沙夜(通称和服)。
使用感は、これからプレイする人は通ぶらず素直にアフロ辺りを選ぼう、というアドバイスに代えさせていただきます。まあ、どうせランクが2、3上がれば他キャラをアンロックできるけどね。

課金周り

300円でAimeカード作成、あるいはお財布ケータイでゲーム開始。
登録初回は基本・応用チュートリアルの完了まで無料でプレイ可能。

プレイ料金は100円で260GP(後述)、全国対戦が1回390GP(150円)。
300円で2試合+2枚、500円で3試合+5枚カード排出。クレジット投入時点でカードは手に入る。
クレジット投入後と試合の合間には45秒間のボーナスタイムがあり、その時間内にデッキ構築などを済ませないとGPが差し引かれて行く。
要は、1試合150円だが、デッキ構築等で長く椅子に座っていられると困るので45秒以降はペナルティがかかる。フリーin/outのゲームでもないのになぜGP制をうたったのかは不明である。

また、ターミナルでは100円(3枚)ないし300円(8枚、最低1枚はR以上保証)でブースターパック購入可能。
デッキ構築ができる公式Webサービスは現在のところ全て無料。

グラフィック

ワイヤーフレームに色がついてステージが構築され、夜桜が舞う演出や各ステージの特徴は悪くない。今後、時間経過やライフによる演出があればなおよし。なぜか全ステージ夜。
ユニットの造形も良く、なじみあるモチーフにサイバーな要素を加えたユニット達は各色の特徴もよく出ている。露骨に恰好悪いものもなく、出来は良い。

ゲームルール(カード)

ゲームルールの概要は公式参照。

要はユニットを出して強化したり、ダメージ系のスペルやらを差し込んだりしながら相手を7回殴って殺し切る。
デッキ圧縮が基本、補助系(ユニットダメージや強化系)のブラフをかけつつ、大きいユニットで殴るか相手に2択をかけるか、あるいは防御不能に追い込んだりなど。
大きな相手は殴ってもこちらが死ぬだけなので、そこを補助系カードで補ったり、カードがあるようにハッタリをかけたりが肝。迂回して直接ダメージへ追い込むのはある程度の資産が揃ってから。

「同一程度のデッキ資産ならば」カードバランスは悪くない。各色の特徴も出ているし、単色で尖るのも、2色で手堅くも、4色デッキで夢を見ることもできる。
スターター+チュートリアル終了時10枚がかなりバランスが取れているので、お互いにその程度の資産で戦うとゲームとしては結構いい出来になる。

ゲームルール(その他)

マナ…もといCPはターン開始時にリセットかつ、1ターンごとに上限が1ずつ最大で7まで上がる。
おおよそ中盤から最大火力が飛び交う感じ。
これに関しては何とも評価できない。TCGに十二分に慣れた誰かが分析してくれるだろう。

売りのはずのジョーカーシステムはキャラ差が激しく、使いやすいアフロをやたらと見ることに。
ジョーカーはコストのみで調整して配布ゲージの増加が全く同じで、受け取りタイミングのせいで完全に産廃と化しているものや、どう見ても完全下位の物があったりする。
事前に互いのジョーカーを知らせたい(知らせたいのか? 本当だな?)ならば対戦前の画面で表示すればいいのだし、これならばさっさとバランス調整してキャラと分離(※1)した方がましな気がする。

先攻有利が目立ち始めているけど、これは即座に取れる対策がなかなかないのでしばらくはそのままだと思う。ちょっとCP差をつけただけでもバランスが大きく変わりそうな感じだ。

(※1)
ああうん、キャラ設定ね。そうだね。

周辺環境(公式サイト)

デジタルカードということもあり、紛失には強い…と思いきや、パスワードロックをかけることができない。追跡が完全に可能なので拾われたAimeからカードを抜かれても被害届を出せば犯人も捕まるし復旧は可能だが…。
ヘッドホン音量の記憶など、ボーダーブレイクで出来ていること(※1)くらいはできていてほしいのだが。

デッキビルド機能は、最低限の機能は仕上がっていると思う。筐体で制限時間以降は有料なのを弁護する程度の使い勝手はある。
あとは棋譜の類があれば有料でも喜んで払う人はいる(自分はそうだ)だろうし、正にデジタルならではと思うのだが。

(※1)
ボーダーブレイクは再発行可能にしたりパスワードをかけるのは有料。
余談だが、コナミのスティールクロニクルでは、「カードまで作るようなプレイヤーは大切なヘビーユーザー候補」ということか、無料コースにパスワード等は含まれている。
しばらくプレイしないと復帰時にクレジットサービスされたりと、本気で取りに行って立場を固めた。ステクロはβごろから見るとここまで「出来る子」だとは思わなかった。
操作系が合わずにあまりプレイしないが、アップデート頻度も安定していて素直に感心している。

周辺環境(トレード)

ジャンルに反してトレードは現在(※1)存在しない。

「プレゼント」機能があり、1日20枚まで移動可能。
ただし、ターミナルで直接交換するのみで、ネットワーク経由でのプレゼントは不可能。また、「RMT」なる謎の単語で金銭を伴う交換は禁止…じゃあなぜ交換機能が存在しない?
仲介業者が存在できないため、プレイヤー同士の直接交換のみ。当然ながらカード単位で需給が一致した相手がいないと交換が起きない。
実際、欲しいカードが揃ったプレイヤーはトレードに来ないため、店舗の少ない地方では交換相手が見つかりにくい例も出てきているようだ。

トレード周辺に関しては、はっきり言って一体何がやりたいのか分からない。楽がしたいか、あるいはまともにシステムを組むことをやりたくないのか。
風営法+デジタルデータの所有権の関係かもしれないが、禁止を明言してまで得たい物が本当に分からないのだ。なぜ、実カードでなくなったら「RMT」という謎の単語がでしゃばる?

(※1)
予定はあるらしい。
というか、稼働と同時に出すべきものを恥ずかしげもなく予定と言い切るのはどうかと思う。

機会平等、あるいは納得するための儀式

稼働から10日ほど2chなどを見ていて、TCG慣れした人はおそらく理解が及ばないと気づいたのだが、新作アーケードゲームで初戦からデッキ資産が潤沢な相手と当たるのは問題ないだろうか?

ぼく個人は非電源系ゲーマーでもあるし、MTGで「とりあえずブースターを箱1つ2つ買って、プロクシで練習試合しつつトレードや単品で方向決めて行けば」の空気になじんでいたのでまあ問題ない。

だが、トレードはろくにシステムも整備されず、単品買いが許されない(※1)状態で、一試合150円かかるゲームでそれは本当に正当なのか? ランクによるマッチングを行うなら、一定ランクまではブースターとプレゼントのカードは使用不可で良かったのではないか?

なるほど、対面での対戦はその時間体験が価値になる。ところで、ネットワーク経由で気軽になった半面、不条理を感じる可能性は高くならないだろうか? 敗北が即座に時間と金をドブに捨てたという感想に繋がらないだろうか?

(※1)
『RMT』が禁止されるため、カードショップが原理的に存在しなくなる。また、双方の需要が満たされない限りリスクを大きく負うため、取引が低調になる。
貨幣の発明による経済の発展の逆を行くという言い方もできるかもしれない。

何を得ただろうか

遠隔でマッチングできてジャッジが完全に公正なTCGという面について。
この点については原理的に問題ない。これが欲しかった人はカードゲーマーに結構いたんじゃないかと思う。
だが、本来ならば地方と都市部の差をなくして環境を整えるはずなのにトレードでかえって格差を作ってしまっている。
あるいは自身でカードを集める方向なのかもしれない。しかしそれならばデッキ半分が1日に動かせる(※1)この仕様は半端すぎる。

(※1)
正直、戦績が10戦ないうちに、デッキが完全にブースターで仕上がった相手(相手の戦績も10戦ちょい程度だ…勝率が8割ほどだが)と戦うのは馬鹿らしい。
もっとも、「初期デッキで余裕」というのが2chのテンプレにある辺り、大半のプレイヤーにはあまり問題ではないのかもしれないが。

総評

ゲームとして、資産が同程度と言う前提つきで既存カードのバランスは大きな問題はない。
ただし、それ以外は佳作という点はあれど、あえて他の娯楽を押しのけるものが思いつかない…カードゲームであることで不便さを受け容れるのも含めて十分かどうかによる。

TCGとアーケードゲームを融合させた結果、良いシナジーと同時に悪いところ取りの面も間違いなく出ている。
そもそもがアーケードに来るユーザーとTCGという時点で絞り込みがされているので不満の声はさほど目立たない。だが、「TCG」と「アケゲー」の看板を、便利に使い分けてのマイナス面の正当化ではなく長所のプレゼンにこそ使ってほしかった。

今後の改善を真面目にやらない限り、個人的にはゲームに限定しない別の趣味に向かうと思う。「隣のゲームには勝っている」「近所じゃかなり安くしている」だけじゃ、もう不満なのだ。

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