Ex-Libris
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【ネトゲ始末記】未来の栄光を君に
ファンタシースターオンライン2

概要

一部の終末的酷評ほどひどくはない。だが、将来に明るく希望を持たせることができていないのも確か。
本質は、その不安感が何かの不足からではなく根本的なアプローチの下手さと古臭い開発マインドが垣間見えることから来ている点、そしてまだ1年しか経っていないのに底を感じさせる点か。

10年宣言の前に、まずは、何年前に足跡の付いた地雷を踏んだのかを心配するところから始めよう。

βより

クローズドβに参加、レンジャーのTPS視点のみでプレイしてあまりの疲労にダウン。ついでにユーザーインターフェースの出来の悪さがどうやらPSVita絡みと分かって、各種仕様が足枷を付けられると思いそのままフェードアウト。
さて、あれから数か月。

操作系

今回はキーボード+マウス。マウスのサイドボタンにはサブパレットの一部キーを割り当て。クラスはフォース。

さすがに動かすのすら苦痛なレベルのカメラワーク(3歩先の木箱を殴るのにも非直観的で、1時間たたずにアンインストールしたタイトルもある)などといったものはなし。
キャラクターの挙動も程良い速さではないだろうか。

ただしサービス終了まで解決しなさそうな問題としてロックオンの扱いがある。ロックオンキーを押した際に何がロックオンされるのかが直観から時々外れ、しかも法則が見えにくいのだ。
一定までの近距離優先、照準からの角度で候補を絞るような素直なものなら良いのだが、いきなり真後ろの距離が離れた敵をロックオンしたり、柱などのオブジェクトに吸われたりということがあり、ストレスの元になっている。
おそらくは、あまりにも便利にしすぎると(特にフォースが)強くなりすぎるという考えもあるのだろうが、弱点部位はキーダウン→ホールド中のみロックオンで色を変えることで示すなどの方法があるはず。
エレメカも経験している会社のはずであるし、ここから何とか改良を期待したい。

ユーザーインターフェース

恐ろしく前時代的、そして他の要素ともども開発が楽をすることに注力しすぎ。

うまい例えではないかもしれないが、ゲーム機のRPGで次々上に重なるウィンドウを順に下まで辿るしかない眠たい段階メニューを見たことがあればそれに近い。(ステータス>今のパーティー>キャラクター>見る)
この「制御が楽で作りやすい」前時代のモデルで全てが作られており、マイショップの出品ひとつするにも延々と何段階もメニューを掘り、そしてEscキーで順に階層を戻らなければ抜けられない。
手持ちアイテムと倉庫を交互に見比べて出品していけない(どこから出品するか、という階層に一度戻らないといけない)というひどさ。
あるいは、Vitaやスマホが…という言い訳をしたいのかもしれない。だがそんな物はPCと別のインターフェースを用意すればいいだけ(※1)で、無理に全機種で統一する意味自体がない。

(※1)
これが開発工数ではなく技術力やそもそもそういう発想がない、という理由でない事を祈る。デザインパターンなりでヒントは山のように手に入るはずだ。

課金要素

実質的にプレミアムセットの月額1300円と考えて良い。

まあ、最新流行の髪型やダヨーさんが欲しかったりすると色々と考えないといけないが、適当な衣装程度ならば何とでも工面できるだろう。高みをのぞまなければ割と欲しい物は手に入る。

一方で、プレミアムセットでFUNを増やして安定収入の一助にし、拾ったものをマイショップに出品(これは無課金要素でも一応手に入りうるし、単体のサービスとしても売っている)しないとそもそもが経済活動に参加させてもらえない。
収入のために直接トレードするにもプレミアムセットでなければできないし、拾ったアイテムを店売りしても正に二束三文(BOT対策からか大幅に売値ダウンした)にしかならない。

完全に無料で遊ぶのは厳しいので、様子を見るのが無料というところ。
スクラッチ(ガチャ)はレアアイテムは本当に出ないようだが、そこそこの物までは出たアイテムを売って他を買うことはできる。スクラッチ品をリサイクルして得られるアイテムがある関係上、一定の売値は市場が保証してくれるのだ。

人口

大きな問題は今のところ特にないと思う。
ただし、装備強化や流通の関係上、過疎が始まるとそのシップ(サーバ)でのプレイが不自由になり始める可能性があることは覚えておいた方がよい。(有料だがシップ移動自体は即座にできる)

倉庫やルームがアカウント/キャラクター紐付けではなくシップ紐付けのため、後々に必要になってもシップ統合ができないのだが。2つのシップ両方にデータがあった場合にどうするかという単純な問題のほか、統合を必要とするほどの状態では他シップとの物価差が開いている可能性が高い。
素材としてのドロップ武器消費というデザインで、無料ではアカウント1つに1キャラしか作れない事を考えればここは繋げてしまった方がよかったと思う。

パーティー、エリア、クエスト

大原則として、クエスト単位で全体フィールド生成、プレイヤー参加という点では入場時のパーティーで基本最後まで。基本構造は

「入口のシングルPTエリア」
「突発クエストもあり、マルチPTエリア」
「クエストの目的のためのシングルPTエリア(ボス等)」

この時点で、勘がよければマルチPTエリアが同床異夢的に浮いているのに気付くかもしれない。
マルチPTエリアと言いながらも、他のPTと会うだけ。
例えば、マルチエリアまで進んで狩りをしながら通りすがりの誰かとPTを組み直して苦手なボスを倒すという流れができない。クエストを破棄してカウンターから再度クエスト中のPTに入る、あるいは最初からPTを組めと言いたげではあるのだが…。

何となくの共闘、というのは案外悪くない面白さではあるのだけど、進入時に組ませたPTを変更できない形にして考慮事項を抑える代わりに実装できたであろうもの、あるいはきちんとオープンエリアとして機能するようにブラッシュアップをかけて得られたであろうものと比べると、どっち付かず感がある。

そして、サービスイン後のアップデートでマルチPTエリアに滞在しての狩りは報酬を減らされた。
バランスや違反ツールとの絡みという点はあるものの、結局は「最大12人、途中参加ありのインスタンスフィールド」を飾り立てることもできずに存在意義自体を終わらせてしまったような残念さがある。

マップ、フィールド

ランダム生成に過剰な期待はしていないのだが、マップ構造自体にかなり初歩的な問題が起きている。

最初はマップ全体は見えず、分かれ道もある。敵を倒してもそこから3ブロック離れて戻ると再度出現。
これをあまり深く考えずにやるとどうなるかというと、スタート地点から最初に右側を選んで敵を倒しながら進んだ挙句に行き止まり、スタート地点まで再湧きした敵を倒して戻り、今度は左側の通路を敵を倒しながら進む、という間抜けな事が起きる。
どこかで合流地点を作っておく、全体としては大きな円にする、通路の行き止まりまでを短くする、長い行き止まりは高い確率で有用なアイテムを手に入れられる…こういった調整をかければましにはなると思う。

スタックが頻発したり回収不能な場所にアイテムが散らばることもなく、大きな問題はない。地形を自然物に近付けた関係で、逆にコピーが目立ってしまっているくらい。
他に問題児がいるからということもあるが、比較的生成ロジックの改良などの希望が見える要素。

マターボード

スタッフの力量を多方面から疑う、ある意味では一番の問題児要素。

各所でひどい評価なのだが、やってみると確かにひどい。
マターボードという名前で二次元的に見せかけようとしているが、その実、単に何度も何度も同じマップに足を運ばせて、しかも普通にクリアするだけでは達成できないことがある引き延ばし用失敗システム。
MO、MMOのおつかいクエストが、収集、討伐、ポイント到達(NPC会話)だけとよく批判されるが、それを更に駄目にした出来。

普通ならば大筋のメインストーリーのクエストがあって、その周辺に手がかりやメインからの影響に対処するサブクエストを配置、メインを進めるとサブも同時ないしある程度並行して進行する形に作る。
この際、ストーリーがNPCとの会話などで進行し、ゲームデータとしての報酬(経験値、アイテムなど)はクエスト報酬として得られるように分離するのが一般的。冷静に考えてしまうと「街のNPCから近所の噂について話を聞く方が侵食イノシシ10匹を倒すよりも経験値が得られて剣ももらえる」のはおかしいし、興ざめなのだ。
ところが、マターボードでは「砂漠の○○が落とす装備を取得」(特殊能力がついてちょっと強いので報酬のつもりなのだろう)など、つながりも分からなければストーリーとの関係もない、ただのアイテム配布と進行引き延ばし。

しかも現在対象となる要素までしかこなせず、2つ、3つ先に同じマップで同時に埋められるはずのドロップ収拾イベントがあっても進まない。
これでもアップデートで改善されたのが現状で、それまでは隣接したマスが複数あっても選択された1つのマスしか進められなかった。ドロップが確率のみではなく一定数のエネミー狩りで自動成功という救済すら当初はなかった。
更には一度ステージクリアなりで終わらせないとマス目を完了にして進めないため、強制的にブレーキがかかるというどうしようもなさ。

それでも複数の経路からメインクエストへの到達を選べれば意味はあるが、実質的にほぼ一本道で二次元的なボードの見かけは無意味。6枚目ともなると完全に2つのステージに左右で分割され、実質ほぼ全埋めを強制される心の狭さ。

こうしてゲーム進行と空中分解を起こし、ストーリーそのもののつまらなさもあってマイナス評価以外下せないものになっている。

ストーリー

「…あまり賢しげな熟語を使うなよ 馬鹿に見えるぞ」
マターボード5枚目が終わったところまで完了。

まず、先述の通りマターボードでストーリーに関わる話は配置要素の半分もない。
本筋部分で見ても、およそ半分まで来たはずの時点でほとんど話が進んでおらず、1章か2章でお釣りが来る程度の情報量。
各NPCのキャラ付けはあるのだが、繰り返し可能なデイリー、ウィークリーのクエストくらいしかなく、ほぼNPC間の関係も多面的な掘り下げもない。
繰り返すがマターボードが酷くてストーリーが見えないのではない。マターボードの酷さにシナリオ配置の悲惨さが紛れているだけである。

プレイヤーの介入で歴史のifが拓かれる(説明にある)ということらしいのだが、困ったことに、歴史の改変やifの並行世界の話に全くなっていない。(※1)

整合性が取れた物を好むかという点以前に、タイムトラベルならタイムトラベル、並行世界統合なら並行世界統合で、決めたルールは厳守しないと受け手がまともに解釈できない。伏線の類を出そうとしても、現状では描写ミスをまず疑ってしまう。

特に評価すべき点はない。NPCのキャラ立ちも声優の演技や造形がほとんどだろう。
本当にキャラ立ちが得意分野ならば、あの貧相なクエスト量と質は一体なんだ? マターボード配布NPCの台詞も、ろくに楽器が弾けずに破壊パフォーマンスに走るような居心地の悪さを感じた。書いている本人が、物語の力を信じていない気配がどうしてもしてしまうのだ。

(※1)
序盤の話で三叉路のどちらへ進むかで「先輩と合流」「身元不明の少女を助ける」「謎の人物に遭遇して襲われる」になり、ストーリー進行で選べる道が増えるという、ここまでは良くある構造。
ところが、どれか一つしか選べないよう作ってあるはずなのに、3つの選択を一通り体験した後のシナリオはその全てを混ぜ合わせたような結果としてストーリーが進む。
進行上不可避というわけでもなく、選択肢の内容(後続に調査依頼を入れる描写をして、少女を直接助けたか関われなかったかの分岐にする)や提示位置(先輩と合流後に謎の人物と遭遇するかの分かれ目を配置する)をするだけで回避できるのだが。

アイテム収集強化、ハック&スラッシュ

これはバランスを語れるところまで行っていないので保留。
ただ、ある程度以上の人口がいて、かつマイショップに素材を流すモデルに見えるのでそこが崩れた場合に不安が残る。

経験値テーブルで10年計画級(慌てて訂正した)をうっかり出したあたりを見ると、サービス終了まで高レベルを目指して武器を強化する以外の流れは持てないと思う。
長期間遊べるとは即答できないのが正直なところ。協力アクション自体に価値を持たせられれば行けるとは思う、が。

総評

手堅くまとまってはいる。
導線となるストーリーがクソであるのは置いておくとして、ネットワークゲームで難しすぎないアクション、協力物としてとりあえずプレイするならば止める理由もない。
やれることが少ない上に行動のバリエーションも乏しいので飽きをどうするかという問題は遠からずやってくるが。

その反面、RO、リネ2、マビノギ…それの領域に達するという決意を納得させるものは感じられなかった。言うだけならタダ、という感覚ならば遠からずセガというブランドには錆が浮いて穴が空くだろう。

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